日本語コラム

バイカルチュラル教育
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つい最近、あるアメリカ人の若いご夫婦からこんな質問を受けました。「どうやったら、子供をバイリンガルに育てられますか?」というもの。長年、この課題にいろいろな思いを巡らせてきた私には、伝えたいことが山ほどあります。そこでまず思うのは、どうやったらの答えを出す前に、何のために子供をバイリンガルに育てたいかを考えてほしいということ。もし両親が2つの母語を持つ家庭であれば、子供がその両親の家族や友達と意思疎通ができるようにバイリンガルに育てたいと思うのは自然でしょう。それ以外にも、グローバル化した現代社会においては就職の可能性が広がる、社会的視野が広がる、人間関係が豊かになるなど色々な目的が考えられるでしょう。これらの目的を明確にしておくことは、その手段を考える上で大切だと思います。

では、次にその手段です。ポイントは二つ。子供が幼少のころから日常的に2か国の言語・習慣・道徳などを取り入れてバイカルチュラル生活をすること、そして成長段階に応じた大まかなプランを立てることです。たとえば、言語に関しては、両親や家族が2か国語を話せるならば、家の中と外の言葉を分ける、または家族内で言語を分担して話すなどして、日常的にその言語と接する機会を作るとことです。もし、子供が学校で他言語を習っているとすれば、それを映画やテレビ、マンガや音楽などを通して接する環境を作ることもできます。そして、習慣や道徳は、体験を通して子供にとってわかりやすく、楽しく伝えられるのがベストです。我が家では、お正月のおせち料理からハロウィンのTrick or Treatまで年中それぞれの文化を行事を通して楽しみ、学校や地域の多文化体験教室にもたくさん参加しました。さらに、言葉を文化や習慣の一部として取り入るのも良い方法です。例えば、食事をする前後に日本語で「いただきます」「ごちそうさま」をいう習慣をつけ、その意味や文化を理解し身につけられれば、これぞ一石二鳥ですね。

最後に、親や教育者にとってなにより大切だと思うのは、成長段階に応じた大体のプランを立てることです。子供の成長にはいろいろなステージがあります。と同時に彼らはそれぞれの家庭の事情や取り巻く環境によって大きく影響されます。例えば、家で過ごす時間が多い幼少期と児童期は、家族内で言語を分担して話したり、行動範囲が広がり学習能力が高まった青年期には、週末を多文化・多言語環境で育つ家族やグループと一緒に過ごす時間を作ったり、さらに自立期には、子供を異国のお友達や家族に預けることもいいでしょう。それぞれの家庭に合った手段を子供の成長に沿って計画していくことをお勧めします。

ようこそ!
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今年8月から訪米している渡辺洋子さんが、新たにJASCの運営メンバーに加わりました!

これから2年間、文化交流イベント等の企画・運営に携わります。

洋子さんは、国際交流基金日米センターとローラシアン協会が共同運営しているJapan Outreach Initiative (JOI)プログラムから派遣されたコーディネーターで、皆さんに日本文化を一層楽しんでいただけるよう、新たな活動に取り組んで参ります。ぜひ下記の自己紹介文をご覧ください!

コロラドの皆さん初めまして!Japan Outreach Initiative (JOI) coordinatorの渡辺洋子です。

2年間、Japan America Society of Coloradoのメンバーとして、日米草の根交流プロジェクトに従事します。スポーツが大好きで、幼少期は柔道クラブに6年間所属していました。帝京大学で教諭免許を取得しましたが、卒業後はグローバルビジネスに興味を持ち、貿易関連企業で営業職をしながら、NYに短期留学もしました。趣味はダンス・子供服の制作・着付けで、環境問題にも強い関心があります。この分野でも皆さんと文化交流や情報交換ができたら嬉しいです。お会いできるのを楽しみにしています。

E: yoko@jascolorado.org

Instagram: yoko_japancolorado

未来へのレガシー
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いよいよ7月23日、東京2020オリンピック・パラリンピックが開始されます。新型コロナウイルスの影響で1年の延期となったあと、海外観客の日本への受け入れの断念、緊急事態宣言が発令されている首都圏会場で実施する競技の無観客での開催など、これまでにない逆境の中で行われる世界最大のイベントは、私たちの未来に何を残すでしょうか。

 過去、オリンピックはテクノロジーの実証実験の場としても活用された歴史があります。1964年の東京オリンピックでは衛星生中継で世界各国に開会式の模様が放送されたり、2018年の平昌冬季オリンピックでは開会式に1200機を超えるドローンによる光のショーが話題になりました。今回の東京オリンピック・パラリンピックでは選手村を巡回するバスとしてトヨタの自動運転車「eパレット」を利用することになっています。更に、コロナ禍という制約があるからこそ、誰もが「会場に行けなくても楽しむ方法」を模索し、テクノロジー×スポーツが加速するきっかけの大会になる可能性も秘めていると思います。

今回のオリンピックも賛否両論ありますが、数十年後に振り返ったときには、きっと色々なレガシーを残しているのではないでしょう。もし、大会期間中に選手のコロナ感染を抑えられれば、それもきっと後世に残る偉業になるでしょう。

森林浴
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今コロラドは一年で一番美しい季節を迎えていますね。ほんの少し雪をかぶった山々や若い緑が揺らぐ大地、州花のコロンバインをはじめとする色とりどりのワイルドフラワーがそこかしこに咲いていて、私たちの目を楽しませてくれます。こんな恵まれた環境に暮らす私たちは、その恩恵を求めて、山や森に足を運ぶことも少なくないと思います。

実は、日本語には森林浴(英語ではForest Bathing)という、まさにこの自然の恵みを全身に浴びるといった意味の言葉があります。この言葉は、自然美を見直し、森を造る意欲を高めようとの狙いから、温泉浴・海水浴・日光浴などになぞらえて、日本の林野庁が主導して日本国内で提唱した「森林浴構想」に起源があるそうです。また、森林浴の最適な方法としては、心身にストレスを感じない程度の運動量で、生活圏内や近場にある森林を歩くこととされています。そして最近では、この森林浴の科学的効能が様々な研究によって実証されているようです。例えば、森林から発散されている独特な森のにおい成分フィットチッドや滝などの近くの細か水しぶきに含まれるマイナスイオンを人が吸収すると、精神が落ち着きリラックスしてくるという研究結果が出されています。

電化製品やプラスチックに囲まれ、 排気ガスが飛び交う都心で暮らす私たちには、まさに森林浴は心身ともにリフレッシュさせてくれる森林セラピーといったところでしょうか。四季折々の森の表情を楽しみながら、樹木の香りを思いっ切り吸い込んで、森のパワーを全身で感じてみたいです。

「Japan in the Schools 」プログラム
A hybrid Japan in the Schools class.

A hybrid Japan in the Schools class.

今日は、コロラド日米協会の運営する教育プログラム「Japan in the Schools 」の紹介とその体験記です。Japan in the Schoolsは日本とコロラド州を教育で繋ぐという当協会の使命のひとつを果たすため、メトロ デンバーとボルダーエリアの教育機関に提供されています。2015年までに、このプログラムを通して繋がった学校と生徒の数は110校、6000人以上に上ります。内容は日本の地理、歴史、言語、生徒の日常についてのスライドプレゼンテーションと折り紙や習字などの文化体験の二部構成で、小学生から高校生まで、それぞれの教育目的に合わせてカスタマイズされています。

このプログラムに携わるようになって数年、たくさんの学校を訪れる中、私が気づいたことは、生徒たちは想像以上に日本について知っていて興味をもっていること、そしてそんな彼らの興味を支え、素朴な質問に答えられる機会が必要であるということです。特にプレゼンテーションで大事なのは、質疑応答の時間。生徒たちからは、時に思いもよらない質問が飛んできます。例えば、「日本で行かない方がいいところは?」これには答えに困りましたが、あくまで私の意見として「パチンコ」と答え、その理由を説明しました。他にも「どんなアニメが好き?」「日本とアメリカどっちが良い?」など、個人的な見解を問われることも多く、そんな時は彼らにステレオタイプな知識を教えないように注意しながら(これがかなり難しい)、自分の意見を伝えるようにしています。ネット社会で、知識や情報は簡単に手に入るけれど、一方通行でその正確性も問われる今、直接生徒を目の前に話ができるこのプログラムは、生徒たちと双方のコミュニケーションを通して、より正確な情報と、異文化体験を提供できる絶好の機会だと思います。

パンデミックによって学校訪問が難しくなったここ一年程は、オンライン訪問に移行し、引き続き多くの生徒や先生とリモートラーニングで繋がってきました。今後は、学校訪問とオンライン訪問の両方を可能にし、さらに対象地域を拡大して、より多くの生徒と日本との繋がりを築き、彼らが異文化・多文化に興味を持つきっかけになれればと願っています。

銭湯
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皆さん、銭湯に行かれたことはありますか。銭湯とは公衆浴場のこと。実は日本で温泉が世間で注目されるずっと前から、銭湯は存在していました。11世紀末から12世紀に書かれた日本最古の説話集『今昔物語』の中に「東山へ湯浴みにとて人を誘ひ」とあるところから見て、すでに平安時代には京都に銭湯があった可能性は高いそうです。

私の生まれ育った町には、昔ながらの銭湯が、今も当時のままの姿で営業を続けています。男湯と女湯の入り口の間には、店の人(番頭)が座る番台があり、その先は数枚の衝立で仕切られた男女それぞれの脱衣所があり、ガラス戸の向こうにはいくつかに仕切られ湯船と簡素な洗い場があるだけのとても小さなお風呂屋さんです。一時期、日本全国にこのようなお風呂屋さんが多く存在したようですが、今ではスーパー銭湯と呼ばれるサウナやジャグジー、食事スペースやマッサージ器具などが設置された大型施設が人気を集めています。

時を経て形は変われど、日本の入浴文化は今でも生活の一部として楽しまれています。皆さんも、シャワー生活を送る中、一日の終わりに、お風呂に肩までどっぷり漬かりたくなることありませんか。

旬の食べ物「春」
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日本で春といえば、お花見、イチゴ狩り、たけのこ堀り、潮干狩りなどたくさん食べ物に関連した行事が思い浮かびます。毎年、我が家では近くの竹やぶに家族や友人そろってたけのこ堀りに行っていたので、この季節になると、つい懐かしく思い出されます。「旬のものを食べる」ことは、その栄養面や美味しさだけでなく、自然の恵み、環境、そして習慣にふれ、食を楽しむ日本の大切な文化の一つです。さらにはこのような行事を通して「旬の食べ物」にふれることは食育にも繋がります。いつ、どこで、なにが、どのように生育し、どうやって調理したら美味しくいただけるのか、学びが満載です。最近では、アメリカと同様に日本でもスーパーで季節にかかわらず、いろいろな食材が手に入るようになり、旬の食べ物に対する関心が少し薄れているかもしれませんが、それでも、春になると、たくさんの親子連れがスコップやバケツを手に海や山に出かけ、収穫した旬の食べ物を頬張る写真を見るとほっとします。今年の夏は、コロラドならではのPALISADE Peach狩りに出かけてみるのもいいかもしれませんね。